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解決事例 公正証書に書いた清算条項を覆して財産分与を獲得した事例

相談者:40代 女性

相談前の状況:

妻Aは夫Bと離婚の話し合いを弁護士を入れずに進めていたが、財産開示に簡単に応じてくれるわけでもなく、のらりくらりと財産開示をしないまま時間が過ぎ、離婚の話し合いから約2か月が経過してしまいました。このままでは話が進まないと思い、Aとしては子どもの養育費だけでも決めないといけない、と考えました。財産分与とは無関係ですし、養育費は子どものために今すぐ必要なものなので、財産分与は後でゆっくりと話し合い、養育費を早急に決めたいと考え、話し合い、公正証書を作りました。

 きちんと公証役場では財産分与は後から話し合いますと伝えていたつもりでしたが、結局作成された公正証書には「清算条項」といって、財産分与を含めて、すべての権利を放棄し、今後何らの債権債務がない(何らの権利も義務もない)ということを約束してしまっていました。そのため、夫Bは清算条項がないことを理由に財産分与を行わないことを主張してきました。

結果:

2年以上に及ぶ長い裁判の末、財産分与を認める和解が成立しました。裁判所も当初は清算条項があり、これに財産分与も含まれると考えるのが通常である旨を述べてきましたし、夫Bは、財産分与は当然清算条項に含まれている、日本語が読めるのであれば理解できるはずだと回答していました。

 しかしながら、養育費についての公正証書を作成した後も、直接ではないものの財産分与を認めることを前提としているようなやりとりがあったり、公正証書を作成するまでのやりとりが相当具体的であって、突然権利を放棄することが不自然であること、自らの権利であるのに放棄する理由もないこと等を粘り強く主張しました。

 そして審問といって、本人への裁判官・互いの弁護士からの質問をする機会を終えた結果、裁判官の提案した和解案は財産分与を満額認めることでした。

本件は非常に厳しい見通しの下、始まりました。基本的には認められないと考えるのが通常であろうという状況でしたが、依頼者である妻Aさんも根気強く証拠を精査してくださいました。審問にも気丈に向き合っていただけました。その結果として厳しい状況を打破して、満額の財産分与を認めることとなりました。10年以上の弁護士経験の中でも、トップレベルといえる難易度だったと思いますが、非常に良い結果となりました。