営業時間:9:00–18:00
定休日:水・木

海外赴任中の方と日本在住の配偶者が離婚する場合の手続き

海外赴任中の方と日本に在住している方の離婚の場合、通常の離婚とは異なる手続き上の注意点があります。例えば、離婚届1つにしても何処に提出すれば良いのかといった問題が生じます。さらに、調停離婚や訴訟を起こす場合、何処の裁判所に申し立てるのか、また、各手続きに住民票は必要かなど、海外に住んでいるからこその問題が出てきます。

離婚を速やかに成立させたいのであれば、まずは、弁護士に相談の上、手続きの準備を進めていくことをおすすめします。今回は、海外に赴任中の方が離婚する場合の手続きについて詳しく解説していきます。

モラハラ夫に悩んでいる女性

目次

【1】夫婦のうち、どちらかが海外に住んでいる場合の手続き方法

  1. 協議離婚|日本に住んでいる配偶者の住所地、本籍地にて離婚届を提出する
  2. 調停離婚|申し立てる裁判所は合意の上、決定することができる
  3. 裁判離婚|日本に住んでいる配偶者の住所地の裁判所に訴訟を提起する

【2】夫婦ともに海外に住んでいる場合の手続き方法

  1. 協議離婚|夫婦の本籍地にて離婚届を提出する
  2. 調停離婚|どちらかが海外に住んでいる場合と同じ手続きとなる
  3. 裁判離婚|東京家庭裁判所に訴訟を提起する
  4. 海外の裁判所にて離婚を成立させた場合はどうすれば良い?

【3】夫婦のうち、どちらかが海外に赴任している場合、手続きに住民票は必要か?

  1. 協議離婚、調停離婚の場合、住民票は不要
  2. 裁判離婚の場合は、住民票に代わる別の書類の提出が求められる

【4】日本に来ることなく離婚を成立させることはできるのか?

【5】まとめ

【1】夫婦のうち、どちらかが海外に住んでいる場合の手続き方法

夫婦のどちらかが日本国内に、もう一方が海外に在住している場合の離婚は、通常とは少し手続きが異なります。どのような手続きが必要になるのか、詳しくご紹介していきます。

 

(1)協議離婚|日本に住んでいる配偶者の住所地、本籍地にて離婚届を提出する

夫婦の話し合いの中で離婚に合意できた場合は、役所に離婚届を提出するだけで簡単に離婚が成立します。この離婚届の提出先は、日本に住んでいる配偶者の住所地、もしくは夫婦の本籍地のある市区町村役場です。

また、離婚届は必ずしも本人が提出しなくても良い書類となりますので、海外に居たまま離婚届を代理として提出してもらうことが可能です。ただし、後日「離婚届が受理されました」という通知が海外在住の配偶者にも届きます。

話し合いで円満に離婚を成立させることができたら、それに越したことはありませんが、後々のトラブルを避けるためにも、離婚条件を「離婚協議書」にまとめる場合もあります。

例えば、財産分与や子どもの養育費の支払い、親権や面会交流について、慰謝料の取り決めなどです。このときにしっかり「離婚協議書」にまとめておけば、トラブルを未然に防ぐことができます。

離婚条件の話し合いは、ZOOMやLINEなどのツール・アプリを使用してリモートでも行えます。契約の締結についても、電子契約の形式をとることができるので、わざわざ帰国して直接会わずとも進めることができます。

ただし、財産分与の履行や養育費・婚姻費用の支払いの約束が履行されない場合に備えるためには、公証役場で公正証書を作成する必要があります。これを作成することによって、強制的に執行することができるようになります。

 

(2)調停離婚|申し立てる裁判所は合意の上、決定することができる

居住している場合でも、双方が合意した家庭裁判所に離婚調停を申し立てることができます。

しかし、海外在住者が調停期日に出席するのが困難な場合、十分な話し合いは難しいです。このような状況では、弁護士を代理人として出席させることが一般的です。調停期日には通常、代理人が出席し、離婚条件に関する合意が行われます。調停が成立する見込みの期日には、本人と弁護士が共に出席することで、離婚成立の可能性が高まります。

そのため、海外在住者が関わる調停離婚の際には、代理人として弁護士を活用し、離婚条件の話し合いを進めることが重要です。

 

(3)裁判離婚|日本に住んでいる配偶者の住所地の裁判所に訴訟を提起する

調停でも合意にならなかった場合には、管轄の裁判所に訴状を提出することとなります。夫婦の居住地が分かれている場合には、国内在住者の住所地にある家庭裁判所が管轄となります。

自分たちの移行で裁判所を決めることはできないので、注意してください。

訴訟の手続きは、書面をもって進行するものがほとんどのため、当事者本人が裁判所に出向けなくとも、代理人を立てて離婚を進めることができます。ただし、当事者尋問が行われる期日のみは、日本に帰国し、直接裁判所に出席する必要があります。

【2】夫婦ともに海外に住んでいる場合の手続き方法

次は、夫婦ともに海外に住んでいる場合の離婚手続きの方法についてご紹介します。一方が日本に在住している場合と比較して、どのような点に気をつければ良いのでしょうか?

 

(1)協議離婚|夫婦の本籍地にて離婚届を提出する

どちらともに海外に在住している場合は、日本国内の住所地が存在しないため、離婚届の提出は夫婦の本籍地のある場所になります。

離婚届は、インターネットでダウンロードすることもできるので、入手自体はとても簡単です。郵送でも離婚届は受理されますので、本拠地に郵送するというのが1つの方法です。

しっかりと受理されるのか不安な場合は、弁護士に代理人として提出してもらったり、家族に依頼するといった方法もあります。

 

(2)調停離婚|どちらかが海外に住んでいる場合と同じ手続きとなる

調停離婚については、どちらかが海外に住んでいる場合とどちらも海外に住んでいる場合とで、手続きの方法は変わりません。

どちらも日本国籍を持っている日本人であれば、双方の合意で家庭裁判所を選び、離婚調停を申し立てることができます。

ただし、この期日に日本に帰国し、出席することができない場合には調停自体が不成立となることもあるため、注意してください。

尚、こちらも弁護士に代理人として出席を依頼することができます。調停離婚をする際は、代理人として出席してほしい旨も事前に伝えておきましょう。

 

(3)裁判離婚|東京家庭裁判所に訴訟を提起する

ともに海外に在住する夫婦が離婚訴訟を提起する場合の管轄裁判所は、「人事訴訟法第4条第2項、人事訴訟規則第2条」において、東京家庭裁判所に定められています。

夫婦それぞれ代理人弁護士を選任すれば、ほとんどの手続きをスムーズに行えます。海外在住のまま離婚成立を目指すのであれば、覚えておきたいポイントの1つです。

 

(4)海外の裁判所にて離婚を成立させた場合はどうすれば良い?

海外に長く住んでいるご夫婦の場合、現地の手続きを踏んで、現地の裁判所で離婚が成立することもあります。ただし、海外にて離婚が成立した場合は、成立した日から3ヶ月以内に、現地の日本大使館、領事館、本拠地または届け人の所在地の市町村役場に離婚届を提出する必要がありますので、忘れないようにしましょう。

【3】夫婦のうち、どちらかが海外に赴任している場合、手続きに住民票は必要か?

どちらも海外在住など、日本に住所のない家庭は、そもそも住民票がありません。住民票の写しが必要になる手続きの場合は、それに代わる別の書類を提出する必要があります。具体的にどのような書類が必要になるのか、詳しく解説していきます。

 

(1)協議離婚、調停離婚の場合、住民票は不要

夫婦の話し合いで離婚に合意した場合、離婚届の提示のみで、住民票は不要となります。本籍地以外の市区町村役場に離婚届を出す場合には、別途戸籍謄本が必要になるので注意してください。

 

(2)裁判離婚の場合は、住民票に代わる別の書類の提出が求められる

裁判離婚の場合、訴訟は、夫婦の住所地を受け持つ家庭裁判所が管轄となります。管轄外の家裁に申し立てを行ったとしても、原則として審理を行うことはできません。まずは、住所地を確認して、その資料を提出することから始まります。

尚、海外在住者の場合、住民票がないため、住民票に準ずる書面を居住地の役所から発行してもらうことが一般的です。しかし、居住地域の制度で住民票に相当する公的書類がない場合、裁判所とのコミュニケーションを通じて、代わりとなる書類を準備する必要があります。

このように、裁判離婚においては、住所地を正しく証明する書類の提出が重要であり、特に海外在住者にとっては適切な書類の準備が不可欠です。

【4】 日本に来ることなく離婚を成立させることはできるのか?

協議離婚、調停離婚、裁判離婚のいずれにおいても、海外赴任中の人が帰国せずに離婚を成立させる可能性は存在します。

 

協議離婚では、必要な書類を整えて市区町村役場に提出するだけで済むため、海外にいながらも離婚を成立させることが可能です。

 

一方で調停離婚や裁判離婚では、期日に合わせて何度か帰国する可能性が高くなります。調停離婚では、調停期日に本人が出席することで、調停委員から事情や希望を聴取することが重要です。代理人による出席も認められますが、効果的な調停のためには本人の出席が望ましいでしょう。必要に応じて、調停が成立見込みの期日にのみ帰国するという選択肢もあります。

 

裁判離婚においては、訴訟が進むと当事者尋問が行われることが一般的です。この尋問での受け答えが裁判官の判断に影響を与えるため、当事者として訴訟期日に出席し、自身の主張を直接伝えることが重要です。代理人弁護士との連携を密にし、当事者尋問が行われる期日に合わせて帰国し、裁判に出席できるように調整しましょう。

【5】まとめ

海外に在住している配偶者がいる場合、日本で完結する離婚とは異なり、手続き・書類の準備など、少し勝手が違うところもあります。スムーズに離婚を成立させるためにも、日本の弁護士に相談し進めていくことをおすすめします。

 

弁護士法人ハレは、円滑な離婚を実現するために、配偶者との条件交渉の他、家庭裁判所への出席、各種書類の準備・提出など、全力でサポートさせていただきます。今回のような「国際離婚」の実績も多数ある弁護士が在籍しておりますので、初めて弁護士に相談するという方でも安心して任せていただけると思います。

 

配偶者が海外に赴任中の方、もしくはご自身が海外に住んでいるという方で、離婚をお考えの方は、まずは、私たちにお気軽にご相談ください。