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婚姻費用について

婚姻費用の請求に関する問題点と請求方法

養育費は原則として子どもが20歳になるまでとされていますが、婚姻費用が必要になるのは、離婚成立時までです。

一時的なものではあるため、軽視されてしまうことも多いですが、すぐに成立しない場合も多くあるため、慎重に決める必要があります。

婚姻費用をざっくり適当に決めてしまいますと、後々の養育費や慰謝料の交渉において不利にはたらく可能性もありますので、双方がしっかりと婚姻費用について知っておく必要があります。

もらう側のみならず、支払う側にとっても重要ですので、今回は婚姻費用の問題で後悔しないためのポイントをいくつかご紹介していきます。

婚姻費用とは?

婚姻費用というのは、日常生活を送るために必要な費用のことで、家族全員にかかるお金を指しています。

アパートの家賃や住宅ローン、ガスや水道、電気代、食費、子どもの学費や教育費、医療費、食費、社会生活を維持するために必要な費用を合わせて、婚姻費用といいます。

養育費と混同する方も多いですが、養育費は離婚成立後より発生するもので、婚姻費用は離婚が成立するまでにかかるお金を指しています。

例えば、別居状態にある時などは、この婚姻費用がかかっています。

「離婚すること」が決まっていたとしても、実際に離婚が成立するまでは、収入の多い旦那さんから、収入の少ない奥さん、子どもに対して支払われるものです。

ケースとしてよくあるのは、夫との離婚を決意し、奥さんが実家に子どもを連れて帰ってしまった例です。

この場合もご実家があるとはいえ、食費や子どもの学費、教育費などは、夫側に請求できるのです。

「勝手に出ていったのに、何で俺が支払わなければいけないんだ」と思われる方も多いですが、離婚成立までは、”婚姻関係”にあるため、状況はどうであれ、婚姻費用を支払う義務が生じます。

これは、夫、妻、そして子どもと、家族全員が同程度の生活ができるように維持する義務であり、「生活保持義務」と呼ばれるものがあるからです。

婚姻費用については、この生活保持義務のもと定められるものですので、別居していたとしても、勝手に家を出ていったとしても、支払う必要があります。

金額については、以下の項目で詳しく取り上げていきますので、参考にしてください。

婚姻費用の金額はどのくらい?

婚姻費用については、夫の収入、妻の収入、子どもの数、年齢などを考慮して算出されるものです。

婚姻費用算定表とは?

婚姻費用の計算式はとても複雑なため、家庭裁判所の実務においては、「婚姻費用算定表」と呼ばれる早見表を用いて算出していきます。

生活をする上での費用が含まれるため、養育費よりも高くなることがほとんどです。

↓ 婚姻費用シミュレーションはこちら 所要時間 約5分 

婚姻費用の相場

婚姻費用の相場は、各家庭において大きく異なるものです。

例えば、家族構成や子どもの年齢が同じ家庭であっても、夫婦の年収の違いで婚姻費用の金額は大きく変わります。

例えば、婚姻費用の義務者(夫である場合が多い)の年収が1,000万円の場合と、500万円の場合で、大きく違います。

また、権利者(妻である場合が多い)が専業主婦で収入がゼロの場合と兼業主婦で年収300万円だとすると、それでもまた、変わってきます。

つまり、相場とはあってないようなもので、具体的な夫婦の状況から、適正額を調査する必要があるのです。

婚姻費用を上乗せできるケースもある?

婚姻費用算定表の金額をもらっても、生活が維持できないという場合もあります。

例えば、以下のようなケースがあり、その場合は上乗せできることもあります。

・子どもの学費

例えば、子どもを私立の学校に通わせている場合などは、公立の学校と比べ、学費がかかります。

婚姻費用算定表の”教育費”は、公立の学校に通っていることを想定しているため、私立の小学校や中学校についての学費は考慮されていません。

そのため、支払う側が子どもが私立へ通うことに納得している場合や、相手の収入などから、負担させることが妥当だと考えられる場合には、婚姻費用に加算して請求することができます。

・医療費について

例えば、子どもに重度の障がいがある場合など、医療費がかかると想定できるケースでは、一定程度の額を加算して求めることができます。

婚姻費用算定表は医療費も考慮されていますが、あくまでも、日常生活における一般的な医療費のみのため、高額治療について考慮されていません。

具体的な金額については、実際の医療費をみて判断することになりますが、こちらも加算して請求できるケースの1つです。

婚姻費用はいつからいつまで支払うのか?

婚姻費用はいつから、いつまで支払われるのでしょうか?

婚姻費用は”離婚成立時”まで発生するものですので、別居した日(家庭内別居を含む)から、離婚する日までの間、支払われます。

つまり、離婚話が持ち上がり、離婚をする前提で話が進んでいる段階であれば、家庭内別居でも婚姻費用を請求することができます。

過去の婚姻費用の請求はできるのか?

婚姻費用の支払いは、請求する意思が生まれてはじめて発生する義務のため、過去に遡って請求するのは難しいです。

長年家庭内別居状態にあったとしても、請求の意思がなく、そのままの状態が続いている場合は請求の対象にはなりません。

分かりやすいところでは、「婚姻費用を求める調停を申し立てた時」です。

弁護士にご相談いただいているケースの場合は、内容証明郵便等で相手に婚姻費用の支払いを請求した時が婚姻費用の発生時期となります。

つまり、この婚姻費用について知らずに別居をしている状態であれば、相手にも支払い義務は生じません。

権利者であれば、別居と同時に弁護士に相談して、すぐに婚姻費用を請求することをおすすめします。

婚姻費用を算出する”収入”とは?

婚姻費用はお互いの”収入”から算出されるものであるため、正確に収入を調査する必要があります。

婚姻費用についての5つの注意点

婚姻費用についてのご相談が増えています。

権利者側からすると、「知らないと損してしまう」ものですので、しっかり請求することをおすすめします。

ただし、婚姻費用の請求には、いくつかの注意点があります。

今回は5つの注意点と対策について詳しく解説していきます。

 

① 離婚の条件に影響を及ぼすことがある

婚姻費用は何度も説明させていただいている通り、離婚が成立するまでの生活費を指しています。

そのため、短い期間になることも多く、重視されないことも多いですが、後々の離婚条件に影響することもあるため、適正額で合意することをおすすめします。

例えば、裁判基準において婚姻費用の適正額が月に10万円、養育費の適正額が8万円だったとします。

しかし、それでは生活が苦しいと感じ、月12万円で合意したとしましょう。

その後、このケースでは、養育費を交渉する際に、月8万円で合意するのが難しくなります。

子どもを引き取る側からすると、離婚しない方がもらえる金額が多くなってしまうからです。

婚姻費用だったら月に12万円もらえるのに、離婚して養育費だけになると月に5万円になってしまう、「それじゃ、離婚できません。」となってもおかしくありませんよね。

逆に、このケースで、婚姻費用を月に6万円で合意したとします。

今度は、養育費をもらう側が、月8万円の養育費を請求するのが難しくなってしまうのです。

支払う側からすると、婚姻費用の段階では6万円だったのに、離婚したら2万円も支払いが増えてしまうといった事態になるからです。

 

<対策>

対策としては、婚姻費用は”適正額”で合意することが大切です。

お互い「有利」になるように話を進めてしまうと、離婚後の交渉に悪影響を及ぼしてしまうことがあるため、注意してください。

 

② 適正額の判断が難しいこともある

婚姻費用は、夫婦の収入から算出するものですが、正確な収入を知るのが難しいこともあります。

例えば、源泉徴収票や確定申告書などが必要な資料となりますが、相手が速やかに開示してくれず、難航する場合もあります。

また、それらは昨年度の収入となるので、今年収入がアップしている場合も判断が難しくなります。

不動産収入や株の配当金などの収入がある場合、住宅ローンを負担している場合、自営業や個人事業主の場合なども、基礎収入がいくらあるかを判断するのが難しいため、専門家の判断を仰ぎましょう。

 

<対策>

離婚問題(財産分与や婚姻費用)に強い弁護士に相談し、適正額についてのアドバイスをもらってください。

 

③ 口約束で「合意した」としないこと

話し合いで解決できるのは良いことですが、合意は全て書面で交わすようにしてください。

口約束で婚姻費用の支払い、金額を決めてしまうと、後々トラブルが発生することもあります。

・ある時から、婚姻費用の支払いが滞るようになった

・婚姻費用の額を勝手に下げられた

・「支払いするなんていってない」など、支払いを拒否された

・婚姻費用が不足していると加算を求められた

・学費を別に入金するようにいわれた

・医療費を別に支払うように請求された

 

<対策>

合意書面を作成し、口約束で進めることのないようにしてください。

また、権利者側の場合は、公正証書も検討するのもおすすめです。

 

④ 話し合いにならない

既に別居している夫婦などは、相手との関係が冷え切っていて、お互いに「会話するのもイヤ」と話し合いにならないケースもあります。

また、一方の暴力(DV)が原因となる離婚の場合は、接触すらできないケースもあります。

 

<対策>

この場合は、弁護士に依頼していただき、代理人という形で交渉するのが1番です。

離婚専門の弁護士であれば、こういった交渉にも一定の実績がありますので、安心して任せることができます。

 

⑤ 調停は負担が大きすぎる

協議として婚姻費用の合意に辿り着けない場合には、婚姻費用の調停を申し立てることになりますが、裁判所を利用するため、とにかく時間がかかります。

また、調停も平日の日中に開催されるため、仕事を休んで行かなければならないなどの問題もあるため、あまりおすすめはできません。

 

<対策>

時間的な負担が非常に大きくなるため、なるべく話し合いで決定したいところです。

夫婦間での話し合いが難しい場合は、弁護士を代理人として交渉する方法をおすすめします。

尚、この調停は”離婚調停”とは全く別のものとなります。

弁護士費用はどのくらいかかる?

婚姻費用の問題のみ、弁護士に依頼する方法もありますが、基本的には、離婚成立前後の全ての問題と合わせて依頼される方が多いです。

協議離婚なのか、離婚調停を申し立てるのかなど、細かい内容で弁護士費用は大きく異なります。

このあたりについては、ご相談の段階でもある程度費用をお伝えすることができますので、是非お気軽にご相談ください。

婚姻費用についてのよくある質問

婚姻費用について、よくある質問をQ&A形式にまとめました。

例えば、権利者の不倫が原因で別居、離婚話に発展している場合などは、有責配偶者となり、婚姻費用の請求が認められないこともあります。

参考となる判例もありますので、詳しい内容は下記よりご覧ください。

大阪高裁(平成28年3月17日)

権利者に離婚の意思がなくとも、婚姻費用の支払いが生じます。

これを、”婚姻費用地獄”と表現することがあります。

婚姻費用は、離婚成立時まで発生するものですので、早く離婚を成立させることでその地獄からは解放されます。

ただし、上記のように権利者に離婚の意志がないとなると、時間がかかるケースもあります。

離婚弁護士は、早く離婚を成立させるための具体的な戦略も持ち合わせておりますので、是非お気軽にご相談ください。

婚姻費用は、算定表に基づいた一定の相場があります。

また、特別支出として認められるものがあれば、この相場に加算して請求することも可能です。

特別支出に該当するものとしては、上記でも解説した通り、子どもの私立学校の学費、高額な医療費などが挙げられます。

そういった支出なしに多くもらうとすると、相手の同意が必要になります。

合意しているのであれば、相場以上の婚姻費用を受け取ることに問題はありませんが、後々の離婚問題に影響することもあるため、注意が必要です。

それでも多くもらいたい時は、その理由を弁護士に相談し、デメリットも把握した上で請求するかを改めて考えていくことをおすすめします。

はい。弁護士に依頼することなく、婚姻費用を請求することは可能です。

しかし、さまざまな問題が生じることが予測できるため、専門家へ1度は相談することをおすすめします。

婚姻費用を支払う側がローンを支払っている自宅を出て、新たに賃貸住宅を借りるといった時はどうなるか、などの問題は多いです。

このような場合、算定表上の金額より、減額することが可能です。

例えば、自宅を出て賃貸を借りた場合、家賃(4万円)と住宅ローン(6万円)を月々負担しているとします。

この場合、支払っている側からすると、婚姻費用から6万円を控除して支払いたいところですが、ローンの返済は資産形成に資するという側面もあるため、全額控除とはなりません。

ただ、全く控除がされないとなると、家賃と住宅ローンの二重払いが続いてしまいますので、一定相当を控除するのが妥当と考えられます。

家庭裁判所の実務においては、夫の年収から、年間の返済額を控除した金額を”収入”として算定表から適正額を割り出す方法などが用いられています。

例えば、夫の年収が500万円、住宅ローンの返済額が年間112万円(月々6万円+年に2回ボーナス月に20万円)とする場合、年収を388万円として算出するということになります。

これで実質的に控除されている金額を算出することができます。

義務者が同居していたアパートを出ている場合の家賃はどうなるのでしょうか?

住宅ローンの支払いとは異なり、家賃は資産形成とは関係ないため、基本的には家賃を控除した残額を婚姻費用として支払うケースがほとんどです。

賃貸住宅は生活にかかる費用の一部として認められます。

婚姻費用の請求は、請求すると通知した時点から、離婚成立までの期間支払われるものです。

そのため、請求しないことには一切支払われませんし、過去に遡って請求するのも難しいです。

そのため、別居もしくは家庭内別居をしてすぐに相手に婚姻費用を請求するのがおすすめです。

請求方法に関しては、弁護士さんに代理人となってもらい、内容証明郵便で送っていただくのが一般的です。

子どもが4人以上いる時と同様、算定表の年収の上限は2,000万円(自営業の場合は事業所得1,567万円)となりますので、自身で計算する必要があります。

子どもが4人以上いる時と同様、算定表の年収の上限は2,000万円(自営業の場合は事業所得1,567万円)となりますので、自身で計算する必要があります。

弁護士に依頼して婚姻費用を請求するメリット

婚姻費用を取り巻く問題については色々あり、離婚成立を遅らせるトラブルに発展することもあります。

そういった問題点を解消するために、当社では、婚姻費用に関する知識、実績豊富な弁護士陣が以下のようなサポートを行っております。

婚姻費用がどのくらいもらえるのか事前に分かる

夫、妻、双方の年収、資産、お子さんの年齢や数、その他の状況を総合的に判断して、適正となる婚姻費用の額を調査し、ご案内させていただきます。

こちらの診断は、正式なご依頼をいただく前にお伝えできるものですので、是非、お気軽にご相談ください。

婚姻費用の請求の代理人を任せられる

婚姻費用の請求段階では、既に双方に嫌悪感があり、話し合いができないケースも多くあります。

正式にご依頼いただけば、弁護士名で内容証明郵便を送り、婚姻費用の請求意思を相手に表明することができ、法的な支払い義務を発生させます。

例え、相手が支払いを拒否したとしても、裁判所に命令を出していただき、支払わせることもできます。

離婚時の交渉も代理で行える

婚姻費用とは別で重要なのが、適切な離婚条件で離婚を成立させることです。

婚姻費用の請求は、そのための第一歩でしかありません。

離婚問題が平行線で進まない場合には、離婚調停を申し立てる方法もありますが、当社としてはあまりおすすめしていません。

何故なら、調停を申し立てると、解決、つまり離婚成立までの時間を要するからです。

離婚専門の弁護士は、依頼者の代理人として相手と交渉を重ね、なるべく早期での解決を目指します。

これが、依頼者の精神的な負担の軽減にも繋がると感じています。

各調停の申し立てについて

適正額の婚姻費用が支払われない場合、不当な金額の請求がある場合、そもそも話し合いができない場合などについては、婚姻費用の調停を申し立てることもできます。

また、離婚を前提として進めるものですので、離婚調停申し立ても行い、同時に進行する場合も少なくありません。

婚姻費用の申し立ての場合は、調停にて年収の証明資料(確定申告書や源泉徴収票など)などを提出して、適正額であることや支払い義務があることなどを調停員に伝えます。

当社の弁護士は、これらの調停においても多くのノウハウ、実績がありますので安心してお任せください。

まとめ

婚姻費用は一見、多くもらえた方が有利に思えますが、後の離婚条件にも影響を与えることがあるため、慎重に確定させる必要があります。

これは、義務者(支払う側)、権利者(もらう側)どちらも重要なポイントとなります。

まずは、それぞれの状況に応じた適正額を正しく算出し、双方が納得のいく額で合意してください。

また、後々の支払いトラブルに発展しないように、合意書を書面にて作成することが重要です。